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日本では、年間約472万トン規模のフードロスが発生しており、そのうち事業系からは約236万トンが廃棄されています。
パン業界においても、製造過程や販売における廃棄が問題となっており、その経済的損失や環境負荷は無視できません。このような状況を受け、パン業界ではフードロス削減に向けた新たな販売手法やテクノロジーの活用が進められています。

本記事では、パン屋が直面するフードロスの現状と、その解決策として広がる新たな販売手法やテクノロジーの活用について詳しくご紹介します。

ロスパンに新たな価値を生み出し、無駄を減らす取り組みとは? 具体的な事例を紹介しながら、フードロス削減の方法を詳しく解説します。

参考:令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成!:農林水産省

パンのフードロス問題とは?

パン業界のフードロス問題は、パンの特性と消費者のニーズが影響し合うことで生み出される課題です。多くの消費者は「焼きたて」「作りたて」を求め、店舗側は常に焼きたてのパンを豊富に用意しようと努めます。その結果、需要を上回る生産量となってしまい、フードロスが構造的に発生しやすくなっているのです。

また、パンは時間の経過とともに鮮度が落ちやすいため、販売時の見栄えを保つためにも頻繁な焼き直しが行われます。さらに、天候や季節による需要の変動を正確に予測することは難しく、余剰在庫が生じる要因となります。

こうした背景から、パン業界ではフードロスの問題が深刻化しており、適切な対策が急務となっています。

【解決策1】作りすぎない

フードロス削減に最も効果的な方法は、余らせないことです。近年、デジタル技術を活用した取り置き予約システムの導入により、より正確な生産計画が可能になっています。

取り置き予約システム導入により、確実な受注に基づいた生産計画が立てられるようになり、材料の無駄を削減しつつ、労働時間の効率化も図ることができるようになりました。同時に、品切れリスクも低減できるため、顧客満足度の向上にもつながります。

また、最新のAI技術を活用することで、気象データと連動した売上予測や、地域のイベント情報等の自動収集・分析まで可能になっています。さらに、SNSのトレンド分析や競合店の影響度分析まで行えるシステムも登場しており、今後はより精度の高い需要予測の実現が期待できます。

【解決策2】余ってしまったら、ロスパン対策

商品を余らせないことが理想ですが、余ってしまった場合は廃棄せずに、ロスパン(廃棄予定の品質に問題がないパン)を有効活用しましょう。
ここでは、ロスパンの削減のみならず、付加価値をつけることに成功した事例をご紹介します。

事例1『rebake』

引用元:https://rebake.me/

「rebake」は、パンのフードロス削減に特化した通販プラットフォームです。全国のパン屋と消費者をつなぎ、廃棄される可能性のある「ロスパン」を販売することで、パン屋はロスを減らし、消費者はお得にパンを楽しみながらフードロス削減に貢献できる仕組みになっています。

2023年には、「rebake」を通じて700トン以上のパンの廃棄削減を達成。さらに、通販事業にとどまらず、環境保護や持続可能な社会の実現にも取り組み、収益の一部を環境保全団体へ寄付するなど、社会貢献にも力を入れています。

事例2『TABETE』

引用元:https://tabete.me/

「TABETE」は、飲食店やパン・ケーキ店、スーパーなどで発生するフードロスを削減するためのマッチングプラットフォームです。まだ美味しく安全に食べられるにもかかわらず、廃棄の危機にある食品を掲載し、消費者が購入・引き取りできる仕組みを提供しています。

このサービスを利用することで、店舗は食品廃棄を抑えつつ売上を確保でき、消費者はお得に食事を楽しみながらフードロス削減に貢献できます。

登録料や月額料金は不要で、購入時のみ代金が発生するため、気軽に参加しやすいのも特徴です。首都圏を中心に全国の店舗が参画し、通常の販売商品に加え、試作品やまかない品なども取り扱っています。

事例3『夜のパン屋さん』

引用元:https://yorupan.jp/

「夜のパン屋さん」は、閉店間際に売れ残りそうなパンを集めて再販売するユニークなビジネスモデルです。また、フードロス削減だけでなく、地域の人々に雇用機会を生み出すことも目的としています。

この仕組みにより、パン屋は廃棄を減らしながら売上を確保でき、消費者はお得にパンを購入可能に。さらに、地域イベントへの参加やSNSを活用した情報発信を通じて、コミュニティとのつながりを深める工夫も行っています。

事例4『札幌の焼きたてパンの店どんぐり』

「どんぐり」は、閉店時に余ったパンを冷凍し、オンラインショップで「もったいないセット」として販売。各店舗で集めたパンを詰め合わせ、購入者にワクワク感を提供しながらフードロス削減に貢献しています。

また、企業とのコラボレーションによるパンの自動販売機設置を通じ、地域の働く人々に手軽にパンを提供する試みも実施。さらに、福祉施設への寄付にも取り組み、子どもたちが楽しめる形でパンを届けるなど、地域貢献にも力を入れています。

このように、「どんぐり」はオンライン販売や自動販売機、寄付活動を通じて、フードロス削減と地域のニーズに応じた支援を両立する取り組みを展開しています。

札幌の焼きたてパンの店どんぐり

ロスパンをアップサイクル

アップサイクルとは、廃棄予定のものに新たな価値を加え再利用する取り組みであり、食品業界でも革新的な事例が増えています。パン業界においても、ロスパンを活用したさまざまな取り組みが進められています。

食品加工品への転換(新商品開発)

ロスパンを再活用する一般的な方法として、ラスクやフレンチトーストへの加工、パン粉製造などがあります。また、パンを原料としたクラフトビールの製造も注目されており、独自の風味を持つビールとして新たな価値を生み出しています。

非食品分野での活用

パンを素材にしたアート作品やインテリア小物の制作も行われており、環境意識の高い消費者に支持されています。さらに、教育教材として活用することで、子どもたちにフードロスの重要性を伝えるツールとしても役立てられています。

環境への配慮 – 堆肥化による循環型社会への貢献

廃棄されるパンを堆肥化し、土壌改良に活用する取り組みも進められています。これにより、フードロスの削減だけでなく、持続可能な農業への貢献にもつながります。

これらのアップサイクルの取り組みは、フードロスを減らし環境負荷を軽減するだけでなく、企業のブランド価値向上にも寄与します。消費者の環境意識が高まる中、持続可能な製品を提供することは企業の競争力を高める重要な要素となっています。

【解決策3】ホームページやSNSを活用する

ここでは、デジタルツールを活用してフードロス削減と売上向上を両立させる方法をご紹介します。ホームページやSNSの活用により販売機会を拡大するとともに、顧客との接点を増やすことで需要の把握精度を高め、計画的な生産・販売を実現していきます。

取り置き予約システムを導入する

取り置き予約システムを活用すれば、事前予約データに基づく精度の高い需要予測が可能となり、無駄を削減できます。

現在の取り置き予約システムは、スマートフォンでの簡単操作を基本とし、多言語対応や多様な決済手段にも対応するなど、顧客の利便性を重視した設計となっています。

また、スタッフの業務負担を軽減しながら、フードロス削減と顧客満足度向上、そして売上アップを同時に実現できる有効なツールとして注目されています。

冷凍パンのネット販売でフードロスを削減する

冷凍パン販売は、急速冷凍技術を活用することで長期保存が可能となり、在庫リスクを低減しながら安定した販売を実現できます。配送エリアを拡大することで、これまで店舗に来店できなかった遠方の顧客にも商品を届けることができるようになります。

また、法人向け販売やギフト需要への対応、定期購入システムの導入など、従来の店頭販売とは異なる新たな販売チャネルの開拓にもつながります。

販売データをもとにした需要予測でフードロスを削減する

効果的な需要予測には、ネット販売や取り置き予約システムから得られるデータの活用が重要です。これらのシステムを通じて、時間帯別の注文傾向、商品カテゴリーごとの人気度、リピート顧客の購買パターンなどの詳細な情報を収集できます。

これらのデータを分析することで、翌日や週単位での需要をある程度予測することができ、生産量の調整を行い、フードロス削減につなげることができます。

Instagramのショッピング投稿を活用する

Instagramは視覚的な訴求力が高く、パン屋との相性が良いプラットフォームです。ショッピング機能を活用することで、投稿から直接商品を購入できる導線を作り、販売促進とフードロス削減を両立できます。賞味期限が近いパンを特別セールとして紹介することで、無駄なく販売することも可能です。

また、焼きたてパンの魅力的な写真の投稿や、製造過程を紹介するストーリーの活用により、顧客との距離を縮めることができます。適切なハッシュタグを設定することで地域の顧客に効果的にアプローチし、認知度向上と新規顧客獲得につなげることも可能です。

まとめ

パン業界のフードロス問題は、デジタル技術の活用と柔軟な発想で、新しい解決策が生まれています。

取り置き予約システムやネット販売を取り入れることで、事前注文のデータを活用した需要予測ができるようになり、作りすぎを防ぎながら販売のチャンスを広げることができます。さらに、SNSでの情報発信を工夫すれば、新規顧客の獲得や販路の拡大につながり、売上アップとフードロス削減の両方を実現できるでしょう。

持続可能なパン屋経営を考える上で、フードロス対策はもはや欠かせない要素となっています。ぜひ、お店に合った方法から始め、少しずつ取り組みの幅を広げてみてください。

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