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パン業界は近年、さまざまな課題に直面し、経営環境がいっそう厳しくなっています。原材料費の高騰、人手不足、デジタル化、多様化する消費者ニーズへの対応など、課題は尽きません。
しかし、こうした状況を支えるために、国や自治体による補助金・助成金制度が数多く整備されています。
助成金・補助金とは?
まず、補助金と助成金について簡単に説明します。どちらも一定の要件を満たせば支給されるという点では同じですが、補助対象や支給金額、採択基準など性質が異なります。
助成金とは
助成金は厚生労働省が管轄しており、主に「雇用」や「職場環境」の改善について支援することを目的とされたものが多く、要件を満たしていれば受給できる可能性が高いのが特徴です。
補助金とは
補助金は主に経済産業省や地方自治体が管轄しており、事業をサポートすることを目的とされたものが多く、「事業拡大」「業務改善」「設備投資」「開業支援」など、補助金の要件によって補助対象はさまざまです。
助成金とは異なり、要件を満たしていれば受給できるというものではなく、申請内容によっては採択されず受給できないこともあります。
補助金は公募期間が細かく区切られていることが多く、期間内に必要な書類を揃えて申請する必要があります。また予算に限りがあるため、予算上限に到達次第打ち切られる早い者勝ちの補助金が多いのも特徴です。
パン屋が厨房機器・設備導入に使える補助金
パン屋が厨房機器などの設備投資をする際、補助金を活用すればコストを大幅に抑えられます。生産性向上に役立つオーブンやミキサー、省エネ設備の導入などが対象になる場合があります。補助金によって要件などは異なるため、最新情報を確認して計画的に進めましょう。
ここでは「中小企業省力化投資補助金」と「ものづくり補助金」をご紹介します。
中小企業省力化投資補助金
中小企業が直面する人手不足の課題を解決するため、IoTやロボットなどのデジタル技術を活用した設備導入費用の一部を国が補助する制度で、「カタログ注文型」と「一般型」があります。
比較的容易に導入でき、即効性の高い省力化投資を支援し、生産性向上や売上拡大を後押しします。さらに、これらの取り組みにより企業の付加価値を高め、最終的には従業員の賃上げにつなげることを目的としています。
▼カタログ注文型(最大1,500万円)
- カタログに掲載された省力化効果のある汎用製品が対象
- 随時申請可能
- 販売事業者と共同申請が必要
補助対象例
- スチームコンベクションオーブン
- 自動精算機
- 清掃ロボット
▼一般型(最大1億円)
- 個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築
- 公募回制
- より高額な投資に対応
補助対象例
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
補助上限
従業員数5名以下:750万円(1,000万円)〜従業員数101人以上:8,000万円(1億円)
※大幅な賃上げ特例を適用する場合、()内の値に補助上限額を引き上げ
補助率
中小企業1/2、小規模・再生2/3
※補助金額1,500万円までは1/2もしくは2/3 補助金額1,500万円を超える部分は1/3
メリット
- 生産効率の大幅向上
- 品質の安定化
- 光熱費の削減
- 労働環境の改善
参考:中小企業省力化投資補助金
ものづくり補助金
中小企業を対象に、新たな価値提供を目的に技術力を活かして新商品・新サービスを開発すること等を支援する補助金です。新製品・新サービスの開発を伴わない既存工程の効率化(プロセス改善)等は対象外となります。
活用例
・地元産の米粉を活用した既存商品の改良と新商品開発
・高品質小型菓子パンの開発及び高効率生産化
・急速冷凍技術を用いた新商品開発
補助内容
従業員規模 | 補助上限額 | 補助率 |
5人以下 | 750万円 | 小規模2/3 中小企業1/2 |
6〜20人 | 1,000万円 | |
21〜50人 | 1,500万円 | |
51人以上 | 2,500万円 |
※小規模と中小企業の判別は、業種と従業員数によります。
※補助上限額を引き上げる特例制度があります。
補助対象例
- 最新型オーブン(温度管理機能付き)
- 大型ミキサー
- 省エネ型冷蔵・冷凍設備
- 自動成形機
- 品質管理・衛生管理機器
メリット
- 生産効率の大幅向上
- 品質の安定化
- 光熱費の削減
- 労働環境の改善
パン屋が販路開拓や集客に使える補助金
ここではパン屋の販路開拓や集客に役立つ「小規模事業者持続化補助金」と「IT導入補助金」をご紹介します。自治体によっては、申請が簡単で受給しやすい独自の支援制度もあるため、一度確認してみるとよいでしょう。
小規模事業者持続化補助金
パン屋の販路開拓や集客促進に役立つ補助金で、申請しやすく活用の幅が広いのが特徴です。
活用例
- 店舗のリニューアル工事
- 看板やショーケースの設置
- プロモーション用の写真撮影
- ホームページやECサイトの制作
- SNS運用のための写真・動画制作
- テイクアウト販売強化のための包装設備
補助上限
50万円(特例時は最大200万円)
補助率
2/3〜3/4
メリット
- 事業を広げるチャンスをつくる
- 新商品やサービスを開発するための資金を確保
- 設備を整えて、生産効率をアップ
- 販売方法を増やして、より多くの人に届ける
- 店の基盤を強化する
- デジタル化で業務をスムーズに
- 顧客管理システムを導入して、お客様とのつながりを深める
- ブランド力の強化
参考:小規模事業者持続化補助金
IT導入補助金
デジタル化による業務効率化を支援する補助金です。多様なパンの製造、販売に加えて、仕込みや接客など業務の幅が広いパン屋にとって、デジタル導入による効率化が期待できます。
活用例
- POSレジシステム導入
- クラウド型在庫管理システム(発注業務の効率化)
- 顧客管理・予約システム(常連客の囲い込み)
- キャッシュレス決済(会計時間の短縮)
補助上限
450万円
補助率
1/2〜3/4
メリット
- 業務効率の改善
- 売上・在庫データのリアルタイム把握
- 発注業務の自動化
- 顧客情報の一元管理
- 販売戦略の高度化
- 売れ筋商品の分析
- 時間帯別の需要予測
- 効果的な販促施策の立案
参考:IT導入補助金
自治体独自の支援制度
地域活性化に貢献するパン屋を応援する補助金も多数用意されています。自治体に支援制度があるか、ぜひ確認してみてください。
補助金の例
- 創業支援補助金
- 店舗リニューアル補助金
- 省エネ設備導入補助金
- 商店街活性化補助金
特徴
- 地域限定で競争率が低い
- 地域の課題解決に重点
- 申請手続きが比較的簡単
パン屋が人材確保・人材育成に使える助成金
ここでは、パン屋が従業員のスキルアップや人材確保、処遇改善に活用できる助成金として、「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」をご紹介します。
人材の確保と定着は、飲食業界全体にとって大きな課題です。これらの助成金を活用し、計画的に支援を検討してみましょう。
人材開発支援助成金
パン職人の育成や従業員のスキルアップを支援する助成金です。
活用例
- パン製造技術の研修
- 食品衛生管理講習
- 接客サービス研修
- マネジメント研修
助成率
経費の45%〜60%
パン業界での活用ポイント
- 若手パン職人の育成
- 衛生管理レベルの向上
- 従業員の多能工化
参考:人材開発支援助成金
キャリアアップ助成金
人手不足対策として、非正規社員の待遇改善や正社員化を支援します。
活用例
- パート従業員の正社員登用
- 賃金規定の整備
- 研修制度の確立
助成額
1人当たり数十万円規模
パン業界での活用ポイント
- パート従業員の待遇改善
- 従業員の処遇改善
参考:キャリアアップ助成金
パン屋が成功する補助金申請のポイント
補助金を活用することで、パン屋の経営基盤を強化し、人材確保や生産性向上につなげることができます。しかし、申請は計画的に進めポイントを押さえることが重要です。
ここでは、申請が成功するためのポイントや審査通過のコツ、よくある失敗例とその対策をご紹介します。
申請書作成の重要ポイント
申請書は、パン屋がその課題に対してどのように取り組むかを明確に示す重要な書類です。
原材料費の高騰、人手不足、食品ロスの削減など、業界特有の課題に対する具体的な解決策を示すことで、補助金を獲得できる可能性が高まります。また、事業計画の実現可能性を数値で裏付けることが重要です。
パン業界特有の課題解決を明確にする
- 原材料費高騰への対応策
- 人手不足解消の具体策
- 食品ロス削減の取り組み
- 衛生管理の強化
- エネルギーコスト削減
事業計画の具体性を示す
- 現状分析を数値で示す
- 導入後の効果を具体的に説明
- 実現可能なスケジュールを提示
審査通過のためのコツ
補助金審査では、申請内容が補助金の目的とどれだけ一致しているかが評価されます。
社会的意義や地域経済への貢献を強調し、具体的な数値目標を設定することが審査を通過するコツです。
補助金の趣旨との整合性
- 補助金の目的を十分理解する
- 社会的意義や波及効果を説明する
- 地域経済への貢献を強調する
具体的な数値目標の設定
- 売上増加率の具体的な目標
- 生産性向上の数値化
- 雇用増加の具体的計画
パン屋が陥りやすい失敗例とその対策
補助金申請では、準備不足や書類不備が失敗の原因となることが多いため、申請前に計画的に準備を進めることが求められます。スケジュールには余裕を持ち、必要書類のダブルチェックを行うことで、失敗を避けることができます。
また、数値根拠の不足を防ぐために、実績データや市場調査結果をしっかりと活用することが重要です。
よくある失敗パターン
- 準備期間の見積もり不足
- 対策1:余裕を持ったスケジュール管理
- 対策2:早めの情報収集と専門家への相談
- 必要書類の不備
- 対策1:チェックリストの活用
- 対策2:提出前の複数人によるダブルチェック
- 数値根拠の不足
- 対策1:過去の実績データの整理
- 対策2:市場調査データの活用
まとめ
近年、パン業界は原材料費の高騰や人手不足、デジタル化への対応など、大きな転換期を迎えています。しかし、こうした課題に対応するために活用できる補助金・助成金がいくつも整備されています。
特に、「小規模事業者持続化補助金」や「IT導入補助金」は、デジタル化による業務効率化を支援する有効な制度です。さらに、各自治体独自の支援制度もあり、活用の幅を広げることができます。
補助金の申請は、必ずしも難しいものばかりではありません。まずは本記事を参考にしながら、身近な商工会議所や専門家に相談してみることをおすすめします。補助金を上手に活用し、事業の継続と成長につなげていきましょう。
※補助金の要件や金額、スケジュールは変更される可能性があるため、申請前には必ず各補助金の公式サイトで最新情報をご確認ください。
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