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コロナ禍のキャンプブームの影響で、アウトドア業界は大きな盛り上がりを見せました。しかし、そのブームが落ち着いてきた現在、売上を大きく落としてしまった事業者も少なくありません。

本記事では、メーカーと小売店のWeb戦略の違い、おすすめのコンテンツ、そしてトレンドに振り回されない考え方について解説いたします。初めてECサイトを始める方やリニューアルを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

【ビジネスモデル別】アウトドア業界のECサイト8選

アウトドア業界のECサイトは、ビジネスモデルに応じて戦略が大きく異なります。

メーカーは直販と卸を主軸に商品を提供する一方で、小売店はメーカーからの仕入れを基に、オンラインと実店舗で販売活動を行っています。これらのビジネスモデルの違いにより、必要なコンテンツやデザインの訴求手法も変わってきます。

今回選定したサイトは、見た目のデザインだけでなく、「いかに顧客との接点を強化し、メッセージを効果的に伝達し、ファンを獲得しているか」という基準をもとに選びました。

参考にしたいアウトドアメーカーサイト

1)パタゴニア

引用元:patagonia

パタゴニアは、米国発祥のアウトドアブランドです。あまり知られていませんが、フリース素材を開発し、登山におけるレイヤリングシステム(重ね着)を最初に提唱したのもこのブランドです。

さらに、環境保護活動に非常に熱心なことで知られています。例えば、セール期間中に「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」というメッセージの広告をニューヨークタイムズ誌に掲載し、大きな話題を呼び起こしたこともあります。

参考にしたい点

  • 「地球を救うためにビジネスを営む」という企業理念の伝達を明確に優先したサイト構成。
  • 理念を深く伝えるための充実したコンテンツ。
  • 顧客がストレスを感じない、使いやすいUIデザイン。

2)macpac

引用元:macpac

macpacは、ニュージーランド生まれの、シンプルで頑丈な登山用バックパックが人気のブランドです。Webサイトは奇をてらわないオーソドックスなデザインで、丁寧に作られており好感が持てます。

参考にしたい点

  • シンプルにまとめられた「ブランドについて」
  • こだわりと遊び心を感じる「特集ページ」
  • 初心者向けコンテンツ「Macpac Guide」のわかりやすさ

3)山と道

引用元:山と道

「山と道」は、2011年に鎌倉を拠点に創業した国産のガレージブランドです。日本発のアウトドアブランドの中で最も熱狂的なファン客が多いのではないでしょうか。商品の魅力はもちろんのこと、情報発信、コミュニティの育成など、ファンを獲得するための活動がとても参考になります。

参考にしたい点

  • ハイキングカルチャーを育むコミュニティ活動
  • オリジナリティのある情報発信
  • センスいい写真とイラストや動画をふんだんに使った商品詳細ページ

4)ティートンブロス

引用元:TETON BROS.

ティートンブロスは2007年に創業したアウトドアブランドです。2013年に発売された「ツルギジャケット」が米国のPOLARTECR APEX Awardsを受賞し、一躍人気ブランドになりました。私自身、このジャケットを10年間愛用していますが、デザイン、カラー、機能の全てにおいてこのジャケットに勝るものはまだ見つかっていません。

参考にしたい点

  • ミニマムなデザイン
  • アンバサダーによる「製品レビュー」コンテンツ
  • 立体感のある商品写真

参考にしたい小売店サイト

1)YAMAP STORE

引用元:YAMAP STORE

コンテンツの質がとても高く、非の打ち所がないECサイトです。
ECサイトというよりもメディアサイトにEC機能がついたという表現がしっくりきます。

ユーザーを魅了するコンテンツでまず集客して、集まった人に商品を売る。理想的なWebマーケティングの手法ですが、ここまでコンテンツ制作に投資できるショップは多くありません。

参考にしたい点

  • 雑誌クオリティの読み物コンテンツ
  • クオリティの高い商品写真と充実した商品紹介文
  • 読み物コンテンツから商品ページへの導線設計

2)Hiker’s Depot

引用元:Hiker’s Depot

長距離を歩くために徹底的な装備の軽量化を行う「ウルトラライトハイキング(UL)」。Hiker’s Depotは、そのカルチャーを最初に日本に広めた、土屋智哉氏が経営するアウトドアギア専門店です。

このサイトは、運営規模に比べて非常に多くのページビューを獲得しています。その人気の理由は、商品ページの充実度にあります。創業時から積み重ねられた、高度な専門知識を基にした詳細で読み応えのある商品説明が、SEO効果を高めていると思われます。

加えて、トレイルの整備や開発を中心としたボランティア活動にも熱心で、この姿勢がファンや関係者からの厚い信頼を受けているのも特長の一つです。

参考にしたい点

  • 専門性があり、読み応えのある商品紹介
  • 商品を売ることよりも、ハイキングカルチャーの伝達を優先する運営方針。
  • 軽量で高速なページ読み込み速度

3)moonlight gear

引用元:moonlight gear

取扱商品に一貫性があり、点数も豊富です。各商品ページには読みやすい適度なボリュームの説明文があり、その全てにスタッフのコメントが添えられています。

また、海外のガレージブランドの代理店業もおこなっており、品揃えに独自性もあります。

嗜好性が高いアウトドア業界と相性の良いInstagramとYouTubeでも積極的に発信をおこなっており、小規模小売店のお手本のようなショップです。

参考にしたい点

  • 前述のハイカーズデポほどのボリュームはありませんが、適度な量で読みやすい商品紹介。
  • 全ての商品にスタッフのコメントがある点も素晴らしい。
  • インスタグラムとYouTubeの積極活用。

4)SUNDAY MOUNTAIN

引用元:SUNDAY MOUNTAIN

多くの量販店のECサイトでは、「送料無料」や「20%オフ」といった購入意欲を刺激するキャッチフレーズを頻繁に使用します。多種多様な商品を扱うため、デザインが統一されず、雑多な印象を与えることも少なくありません。しかし、SUNDAY MOUNTAINのサイトは、緻密なデザインで一貫したイメージを保っています。

参考にしたい点

  • 統一感を保ちつつ、巧みにコントロールされたデザイン。
  • イラストを活用してわかりやすく構成されたABOUTページ。
  • 豊富なビジュアルの商品ページ。ウェア類はモデルの着用写真・身長を明記。
  • 商品ページにブランド紹介と一覧ページへのリンク付き。

メーカーが抑えるべきECサイト制作「3つのポイント」

自社ECの売上だけでなく、ブランド全体の売上を意識する。

小売店の目的は、売上を上げることです。導線設計や回遊性に工夫を凝らし、セールやクーポン、送料戦略で単価アップを目指します。

一方、メーカーは製品の販売だけでなく、ブランドの広報や宣伝、イメージアップといった役割を担っています。

メーカーサイトは自社サイトの売上だけでなく、ブランド全体の売上を視野に入れたサイトづくりが必要です。

販売店は貴重なブランド体験の場として大切にする

オンラインショップの弱点は、消費者は製品を購入するまで触れる試着するといった体験ができないことです。

特にアウトドア用品は、実際に製品を手に取って試したいと思っている消費者は多く、体験の場としての販売店は、消費者にとってとてもありがたい存在です。

わかりやすい場所に「取扱店舗一覧」ページを設置し、体験の場としての販売店を宣伝してください。

販売店との良好な関係づくりはブランドの全体の成長につながるはずです。

販売よりも、ブランドの魅力を伝えることにフォーカスする

メーカーサイトでは、製品を売ることよりもブランドの魅力を伝えることに注力しましょう。

競合にない独自の魅力、ブランドの理念や製品の誕生背景を訴求することで、消費者に共感を呼び起こし、魅力に気づいてもらうことができます。

また、製品の魅力を最大限に伝えるためには、高品質な製品写真とこだわりを伝える文章も欠かせません。これらを販売店に提供することで、販売店の手間を省き、ブランドイメージもコントロールしやすくなります。

小売店が抑えるべきECサイト制作「3つのポイント」

人気商品に頼らずに、お店のファンを増やす。

人気商品を取り揃えるとたくさんのユーザーが訪れるでしょう。でもそのユーザーのほとんどは商品のファンであり、お店のファンではありません。同じ商品が買えればどこだっていいのです。これでは、楽天などの大手モールに出店しているのと大差はありません。自社のウェブサイトを運営する意義は、お店自体のファンを増やし、このお店から買いたいと思ってくれる固定客を作ることにあるのではないでしょうか。そのためには、店主やスタッフの露出を増やし、消費者とのコミュニケーションをとったり、売れた商品に手書きのメッセージを添えるなどして、消費者に親近感を持ってもらうことが必要です。

製品紹介には独自の視点を加える。

多くのウェブサイトでは、商品ページの説明欄にメーカーサイトからコピペしたスペック情報だけが記載されています。しかし、これではお店独自の魅力を伝えることができず、顧客にお店への親近感を持ってもらうことはできません。お店のファンになってもらうためには、自分たちがどう感じているか、なぜその商品を選んだのかといった独自の視点から商品を紹介することが大切です。特に継続して販売する定番商品の場合、時間をかけて丁寧に紹介文を書く価値があります。その文章はSEO効果を発揮し、公開後も長期間にわたって多くの顧客をサイトへ呼び込んでくれるでしょう。

顧客サービスとサポート

よくある質問(FAQ)のページを設ける、問い合わせに対して迅速に対応する、アフターサービスを提供するなど、高品質な顧客サービスを提供することはオンラインショップにとって非常に重要です。これにより、顧客満足度を高め、長期的な顧客関係を築くことが可能になります。高い顧客満足度はお店のファンを増やし、リピーターを増やすための基盤となります。

アウトドア業界のECサイト向けおすすめコンテンツ

ブランド紹介

自社が開発・製造した商品や自社ブランドの特徴、背景、コンセプトなどを紹介します。これにより、顧客は自社ブランドの商品に対する理解と信頼を深め、愛着を感じることができるようになります。特にメーカーサイトにとっては必須のコンテンツとなります。

ショップ紹介

ショップの背景、歴史、特徴、コンセプトなどを紹介するコンテンツです。顧客は、ショップについて深く理解し、信頼を築くことができます。また、ショップの魅力を引き立て、愛着を持ってもらう良い機会にもなります。

ガイドコンテンツ

ガイドコンテンツとは、商品の使い方、選び方、メンテナンス方法など、顧客が商品を選び、活用するための情報を提供するコンテンツです。これらは顧客の問題を解決するために作成され、ウェブサイトの訪問者を増やし、ユーザーとの関係を深め、ブランドの信頼性を高める役割も果たします。

サポートコンテンツ

よくある質問(FAQ)、修理、製品のケア方法など、顧客が問題を解決できる情報を提供します。これにより、顧客の問題を迅速に解決し、良好なカスタマーサービスを提供します。サポートコンテンツは、特にメーカーサイトに必須のコンテンツです。

ユーザー生成コンテンツ(UGC)

商品ページ内に、顧客から投稿されたレビューや写真、動画などを掲載します。これにより、商品やサービスの実際の評価を共有し、他の顧客の購入決定を促します。

取扱ブランド紹介

このコンテンツは、小売店のECサイトで取り扱っているブランドの詳細や特性を紹介するものです。これにより、顧客は特定のブランドの商品を簡単に見つけることができるだけでなく、新しいブランドを発見する機会も提供されます。

読み物コンテンツ

ブログ等で顧客に有益な情報やエンターテイメントを提供するコンテンツです。これにより、顧客のサイト滞在時間を延ばし、ブランドへの関与度を深めることができます。集客目的のSEO(検索エンジン最適化)の観点からも重要です。

まとめ

アウトドア業界のECサイトは、メーカーと小売店によって戦略が異なります。

直販と卸を行うメーカーは、自社ECの売り上げよりも、ブランドの価値を高め、ブランド全体の利益を考えるべきです。そのためには、自社ブランドの特徴、背景、コンセプトを伝えるコンテンツは必須です。また、消費者の体験の場となる販売店への配慮も大切です。

一方、小売店は人気商品で顧客を惹きつけるだけでなく、自店のファンを増やし固定客を作る意識が必要です。そのためには、顧客にあなたのお店で買う理由を提供しましょう。それは、わざわざ訪れて読みたいと思わせる記事や動画かもしれません。もしくは、実店舗で開催するリアルイベントかもしれません。お客さんとの関係を深めるためにできることはいろいろあります。是非、この記事で取り上げたショップの取り組みを参考にして、自分に合った方法でファンに愛されるサイトを作ってください。

この記事は定期的に更新する予定です。

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