この記事は約 9 分で読めます。
近年、ECの市場規模が益々拡大しています。
2023年8月に経済産業省より発表された調査結果*によると、2022年(令和4年)の日本国内のEC市場規模は、BtoCで22.7兆円、BtoBで420.2兆円に増加しています。
こうした背景から、ECサイト(ネットショップ)の開設を検討している方は多いのではないでしょうか?ひと昔前はハードルが高い印象があったECサイト構築ですが、テクノロジーの進化により、今や誰でも手軽にECサイトを構築できるようになりました。
そこで本記事では、ECサイトを構築する際に必ず必要となるECカートについて、構築方法別の特徴やメリット・デメリットについてお伝えしていきます。
これからECサイトを始める方やECカートの乗り換えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
参考:2022年度(令和4年)の電子商取引に関する市場調査|経済産業省
ECカート(ショッピングカート)とは?
ECカートとは、サイト上で商品を販売するために必要な機能を一通り備えたシステムのことです。ECカート機能を備えたウェブサイトをECサイトと呼びます。商品の登録、注文管理、配送管理、決済機能、顧客管理など、ECカートを利用することでECサイトを運営する上で必要な機能を専門知識がなくても簡単に構築できるようになります。
ひと昔前は、ECサイトを立ち上げるためにはゼロからシステムを構築する「フルスクラッチ」が主流で、数千万以上のコストがかかることも珍しくありませんでした。ところが、近年はテクノロジーの進化により、月額数千円から利用できる高機能なECカートが増えており、リスクを最小限に抑えて手軽にECサイトを構築できるようになりました。
ECサイト構築方法とカートの種類や特徴について
ECサイトの構築は大きく分けると4種類の方法が存在します。(ECモールは除きます)
上から構築難易度が高い順に並べてみました。冒頭で「誰でも手軽に」と書いたのはASPカートを利用した場合で、フルスクラッチで構築する場合は最も難易度が高くなります。
- フルスクラッチ
- オープンソース
- ECパッケージ
- ASPカート
以下に簡単な比較表を用意しました。
フルスクラッチ | オープンソース | ECパッケージ | ASPカート | |
構築難易度 | 非常に高い | 中~高 | 中 | 低 |
構築費用 | 非常に高い | 中 | 高 | 低 |
月額費用 | 高* | 不要 | 高 | 低 |
制作期間 | 非常に長い | 短〜長 | 長 | 短 |
保守工数 | 非常に高い | 高 | 中 | 低 |
カスタマイズ性 | 高 | 中 | 高 | 低 |
ECカートを選択する際は自社の戦略や目的に合ったものを選ぶことが大切です。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
フルスクラッチ
フルスクラッチとは、既存のシステムやパッケージを利用せずにゼロからECサイトを構築する方法です。構築には高度な専門スキルを備えた人的リソースと膨大な予算が必要となりますが、デザインや機能面に妥協することなく完全オリジナルのECサイトを構築することが可能です。
また、フルスクラッチで構築する場合はゼロから全てを作る必要があるため、開発に着手する前にECサイトの構成や仕様などの要件をまとめる必要があります。それらを含めると公開までに最低でも1年以上はかかるでしょう。
フルスクラッチで構築する場合は、公開してからの運用体制も考慮する必要があります。受発注のオペレーションや管理画面の操作方法など、運用スタッフへの教育も必要になるため、公開後の運用体制を事前に検討しておきましょう。
フルスクラッチはゼロから全て自社で構築する必要があるため考慮すべきことが多く、構築方法別で見た時に最も難易度が高い構築方法になります。
近年のECパッケージやASPカートは進化を続けており、高品質で使い勝手のよいサービスが数多く存在します。これらの構築方法も選択肢に入れた上で慎重に検討されることをおすすめします。
フルスクラッチはこんな方におすすめ
- 大規模ECサイトを運営している事業者
- 数千万単位の予算と1年以上の開発期間を許容できる
- オーダーメイドや独自性の高い商品を取り扱っている
- バックエンド業務と統合された基幹システムを構築したい
フルスクラッチのメリット
- 完全オリジナルのECサイトを構築可能
- スピード感のある自由度が高いカスタマイズが可能
- 内製化による管理が可能
- 高速PDCAによるサイト改善が可能
フルスクラッチのデメリット
- 高度な専門スキルを備えた人的リソースと膨大な予算が必要
- 公開するまでの制作期間が長い(1年~)
- 外部ベンダーに委託している場合に委託先を変えづらい
- 運用ルールやマニュアルの作成が必要
オープンソース
オープンソース型ECカートとは、インターネット上で無償で一般公開されているソースコードを利用して構築するECカートです。国産のオープンソース型ECカートでは「EC-CUBE」が有名です。多くのサイトで利用されている「WordPress」もオープンソースのソフトウェアに該当します。
自社開発となるため、フルスクラッチに次いで自由度の高いECサイトを構築することが可能です。オープンソース型ECカートはECサイトに必要な機能が予め用意されていますが、ECサイトを構築するためには、サーバーやプログラミングに関する高度な専門知識とスキルが必要となります。
パッケージ購入やサービス利用契約が必要ない分、初期費用や月額料金は不要ですが、外部のベンダーにデザインやプログラミングなどの制作を依頼する場合は、数百万単位の制作費用がかかることも珍しくありません。
また、不正アクセスやセキュリティの脆弱性への対処は自社で対応しなければならない点は注意が必要です。
オープンソースはこんな方におすすめ
- 導入コストをなるべく抑えたい
- 自社に開発チームがある
- オープンソースを利用した開発に慣れている
- R&D(研究開発)に力を入れている
オープンソースのメリット
- 初期費用や月額料金が不要
- フルスクラッチに次いで拡張性の高いECサイトの構築が可能
- コミュニティによる幅広い情報交換が可能
- ベンダーの影響を受けずにECサイトを構築可能
オープンソースのデメリット
- 高度な専門知識とスキルが必要
- カスタマイズや求める機能によっては開発費用が膨らむことがある
- 不具合発生時のサポートや開発コミュニティ存続の保証がない
- 不正アクセスやセキュリティの脆弱性への対処が必要
オープンソースの代表的なサービス
ECパッケージ
ECパッケージとは、ECサイトに必要な機能を一通り揃えてパッケージ化されたものです。ベンダーごとに特徴はあるものの、比較的自由度の高い柔軟なカスタマイズが可能なため、独自性の高いECサイトを構築することが可能です。
ECサイトで売上を伸ばすために必要なメール配信や広告運用、売上管理や分析機能といったマーケティング機能を備えているため、ECサイトの運営をより強力サポートする機能が充実していることも特徴の一つとして挙げられます。
ECパッケージは、よくASPカートは比較されることがありますが、大きな違いとして「カスタマイズの自由度」と「費用」が挙げられます。
ASPカートの場合はASP側が提供している機能に合わせて自社に合った機能を追加する必要がありますが、ECパッケージの場合は自社に必要な機能に合わせて自由度の高いカスタマイズを行うことが可能です。
費用については、ECパッケージはASPに比べると初期費用と月額費用に大きな差があります。初期費用は数百万円~、月額費用は利用している機能やプランによって異なりますが数十万円~と決して安い金額ではありません。そのため、ECパッケージを導入する場合の目安として、ECサイトの年商は少なくとも1億円以上あることが望ましいでしょう。
独自の機能を必要としない小規模~中規模ECサイトを運営する場合は、ECパッケージとASPカートにそれほど大きな差はありません。
これからECサイトの立ち上げを検討している事業者にとって、リスクを最小限に抑えて費用や立ち上げまでのスピードを重視する場合はASPカートでの構築が最適といえます。
ECパッケージはこんな方におすすめ
- 中規模~大規模ECサイトを運営している事業者
- ECサイトで年商1億円以上の売上がある
- オーダーメイドや独自性の高い商品を取り扱っている
- 充実したサポートを受けたい
ECパッケージのメリット
- ECサイトに必要な機能が標準搭載されており安定稼働が期待できる
- 自由度の高い柔軟なカスタマイズが可能
- MA・広告運用・分析などの外部ツール連携が容易
- ベンダーから構築や運用支援などのサポートを受けることができる
ECパッケージのデメリット
- 導入・構築費用が高い(数百万円~)
- 要件や機能によって月額料金が高額になるケースがある
- 公開までに一定の制作期間が必要(3か月~半年)
- 定期的なアップデートやメンテナンスが必要
ECパッケージの代表的なサービス
- ebisumart
- ecbeing
- ecforce
- EC-ORANGE
- W2 Unified(w2 Commerce)
ASPカート
ASPカートは最も手軽にECサイトを構築できる方法です。
ECサイトに必要な基本的な機能が揃っており、専門知識を必要とすることなく予算を抑えて短期間でECサイトを立ち上げることができます。
ASPカートでは自前でサーバーを用意する必要がなく、セキュリティ面や定期的なアップデート・メンテナンスについて自社で対応する必要がないことも大きなメリットといえるでしょう。
近年ASPカートは進化を続けており、ECパッケージと比べても見劣りしないような、デザインと機能性に優れたECサイトを構築できるようになっています。フルスクラッチやECパッケージと比較すると、機能面やカスタム性能では及ばないものの、小規模~中規模ECサイトを運営する場合、ASPカートは一番最初に検討すべきECカートといえます。
補助金を活用することで、より高品質なECサイトを低予算で制作することも可能です。
これからECサイトを始めようと考えている事業者や店舗オーナにとって、リスクを最小限に抑えて短期間でECサイトを立ち上げることができるASPカートは、最適な選択肢といえます。
ASPカートはこんな方におすすめ
- 小規模~中規模ECサイトを運営している事業者
- ECサイトを始めたいと考えている店舗オーナー
- 補助金を使ってなるべく低予算で始めたい
- なるべく短期間でECサイトを立ち上げたい
ASPカートのメリット
- 導入費用や運用コストが低い(数千~数万円)
- 公開までの制作期間が短い(1週間~)
- 構築する際にプログラミングなどの専門スキルが不要
- 定期的なアップデートやメンテナンスが容易
ASPカートのデメリット
- デザインや機能面で差別化が図りにくい
- 自由なカスタマイズや機能追加はできない(ASPで提供されている機能に限定)
- 高度な機能を備えた大規模ECサイトには不向き
- 外部ツール連携に制限がある
ASPカートの代表的なサービス
失敗しないECカートの選び方のポイント
ECサイトの構築方法は選択するECカートによって大きく変わります。
ここからは、ECカートの導入を検討する際に押さえておきたいポイントを紹介します。ECカート選びに失敗しないためにも自社の戦略や状況に応じて、最適なECカートを選びましょう。
事業規模・売上で選ぶ
事業規模や売上によって最適なECカートは変わってきます。
年商が1億以上あり、中規模~大規模ECサイトを構築する場合はECパッケージが候補として挙げられます。この場合、ECサイト構築に数百万~数千万円単位の予算を確保できることが前提となります。
一方で、年商が1億円未満の小規模~中規模ECサイトを検討している場合は、基本的にはASPカートを選ぶとよいでしょう。
必要な機能で選ぶ
ECカートの機能は多岐にわたります。
自社ECサイトに必要な機能を洗い出して、構成や仕様などの要件をまとめた上で最適なカートを選ぶとよいでしょう。ECカートでは後からカスタマイズすることで機能追加が可能ですが、自社にとって必要な機能が予め基本機能として標準搭載されているカートを選ぶ方がコストを抑えることができます。
自社のニーズに合った機能を備えたECカートを選ぶことが重要です。
一般的なECサイトを構築する場合は、ECパッケージもASPカートも基本的な機能面での優位性にそれほど大きな差はありません。
商材で選ぶ
自社の商材と相性が良いECカートを選ぶことも判断基準のひとつです。
例えば、アパレル向けのデザインテンプレートやショップ機能が豊富なASPカートがある場合、カスタマイズに時間をかけることなく、短期間でECサイトを立ち上げることが可能となります。
ECパッケージの場合はカスタマイズ性能が高い分、作り込む時間が必要になりますが、ASPカートの場合は予めデザインや機能面で特定の業種に特化したテンプレートを利用することで、高品質なECサイトをスピーディーに立ち上げることが可能です。
費用で選ぶ
初期費用や月額費用、機能追加・カスタマイズによるオプション費用など、ECサイトを構築・運営していくには様々な費用がかかります。加えて、決済手数料や販売手数料も考慮する必要があります。
中規模~大規模ECサイトを構築するために予算を確保できる場合は、ECパッケージも選択肢に入ってきますが、予算をできるだけ抑えてECサイトを構築したい場合は、ASPカート一択になります。
運用体制で選ぶ
ECサイト公開後の運用体制によって、最適なECカートは変わってきます。
例えば、フルスクラッチでECサイト構築した場合、公開後の運用も含めて全ての自社で対応する必要があります。社内で全て対応できる運用体制を構築するか、外部ベンダーに高額な委託費を支払って運用していくこととなります。
ベンダーから手厚い運用支援を受けたい場合はECパッケージを候補として検討するのもよいでしょう。一方で、なるべくコストを抑えて運用したい場合はASPカートが最適な選択肢となります。
ASPカートの場合はベンダーからの手厚いサポートは期待できないため、制作会社のサポートを受けることをおすすめします。
集客や改善提案、定期的なメンテナンスなどのサポートに対応している制作会社をパートナーとして選ぶことで、より安定した運用が可能となります。
まとめ
ECカートには、それぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。ECカートの特徴を理解して、自社ECサイトのコンセプトや目標を明確にした上で、自社の規模感や目指すべき方向性に合ったECカートを選びましょう。
また、ECサイトを立ち上げたばかりの小さなお店や専門店にとっては、自社のビジネスを理解してくれる制作会社やECサイトを一緒に運営してくれるパートナーを探すことも大切です。
自社ECサイトを成功に導くためには、ECカートを提供しているベンダーや構築経験が豊富な制作会社のサポートを受けることも大きな助けとなるでしょう。
本記事の内容がECカートを選ぶ際の参考になれば幸いです。
弊社では、企業サイトや採用サイトの制作、WordPress構築、shopifyを活用したECサイト構築を得意としています。ホームページ制作やリニューアル、サイト運用に関する無料相談を承っていますのでお気軽にご相談ください。
無料で相談してみる