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ECサイトを立ち上げる場合、安価で手軽に始められるサービスもあれば、構築費用が非常に高額になるケースがあります。これらの違いについて疑問に思った経験はありませんか?ECサイトといってもその機能や目的は多種多様で、一括りにすることは難しいのです。

予算内で自社の商材や目的に合ったECサイトを構築するには、構築方法や項目の内訳、それらの費用相場を正しく理解することが大切です。

そこで本記事では、ECサイト構築の費用相場から、コスト削減のポイントまで詳しく解説していきます。

【構築方法別】ECサイト制作の費用相場

ECサイトの制作費用は、どのような方法で構築するかによって大きく異なります。ここでは、フルスクラッチからモール型ECサイトまで、構築方法ごとの特徴と費用相場を詳しく解説していきます。

フルスクラッチ

フルスクラッチでのECサイト制作は、全てをゼロからオリジナルでECサイトを構築する方法です。最も柔軟性が高く、独自のニーズや要件を完全に反映させることができます。

費用は最低でも数百万円〜が見込まれ、規模にもよっては数千万円〜と高額になる場合がもあります。設計の自由度が高い分、要件定義に膨大なコストを要するケースもあり、時間とコストが膨らむ傾向にあります。

競合他社の追随を許さない唯一無二のECサイトを構築したい場合や、業界トップシェアの売上を誇るような企業はフルスクラッチでECサイトを構築する傾向があります。それ以外の例を挙げると、商品の受発注や在庫管理、物流管理などのバックエンド機能を統合した独自のECサイトを構築する場合はフルスクラッチで構築するケースが多くなります。

但し近年は後述する「パッケージ型ECサイト」をフルカスタムすることで、コストを抑えつつフルスクラッチと同程度の機能を有するECサイトを構築することが可能なため、完全なフルスクラッチでECサイトを構築するケースはかなり減っているかもしれません。

オープンソース型ECサイト

オープンソース型のECサイト制作は、無料で利用できるソフトウェアをベースにECサイトを構築する方法です。有名なところでは、WordPress+WooCommerceやEC-CUBE、Magentoなど、多くのオープンソースECプラットフォームが存在します。これらのプラットフォームでの開発は専門知識を必要とするものの、拡張性が高く、豊富なプラグインやテーマが利用できます。

費用は小規模なECサイトだと数十万円程度で構築できる可能性もありますが、全体のコストで見ると少なくとも200~300万円程度のコストは想定しておいた方がよいでしょう。

オープンソース型ECサイトの場合、サイト運用を見越したバージョンアップ対応やセキュリティの面で専門知識を有した開発者のサポートが必要となる点は注意が必要です。

パッケージ型ECサイト

パッケージ型ECサイトは、予め完成されたEC機能を有するパッケージを基にECサイトを構築する方法です。一般的なECサイトに必要な機能はパッケージに含まれており、追加のカスタマイズや拡張はオプションとして選択することができるため、開発にかかる費用は抑えることができますが、その分初期導入コストが高くなる傾向にあります。

費用は300~500万円程度のコストは想定しておいた方がよいでしょう。求める機能や要件によっては1千万を超えることも珍しくありません。

年商1億を超えるような中規模以上のECサイト運営事業者や、ECサイトの要件が予め決まっている場合はパッケージ型ECサイトでの構築は有用な選択肢のひとつになるでしょう。

ASP型ECサイト

ASP型ECサイトは、クラウド型で提供されるカートシステムを利用してECサイトを構築する方法です。ASP型ECサイトの最も大きなメリットは専門的な知識を必要とせず、比較的安価なコストで高機能なECサイトを短期間で構築できる点にあります。

費用は50~150万円程度が一般的な相場ですが、デザインへのこだわりや多くの機能追加を行う場合は300万程度に膨らむケースもありますが、ほとんどの場合はこの金額以内に収まるでしょう。
また、デザインや機能にこだわりがなければ、予め用意されたテーマを利用して、数万程度のコストですぐにECサイトを立ち上げることができるのが魅力です。

一方で、デザインや機能のカスタマイズには限度があり、高度な要件を必要とするECサイトには適さない場合もあります。年商1億を超えるような中規模以上のECサイトでは「パッケージ型ECサイト」を選択する傾向が強いですが、近年はshopifyのようなASP型ECサイトでも、高度なカスタマイズ機能を有する上位プランを提供しているケースがあるため、いずれも選択肢となりうるでしょう。

モール型ECサイト

モール型ECサイトとは、楽天やAmazonなど、大手のオンラインショッピングモール内で自社のショップを開設する方法を指します。モール型ECサイトは厳密には楽天のような「モール型」とAmazonのような「マーケットプレイス型」に分かれます。モール型ECサイトの大きなメリットは、モールの高いブランド力や集客力を活用して、販売を開始できる点です。また、独自にECサイトを構築する必要がないため商品さえ準備できていれば簡単に出店できる点もメリットになります。

モール型の初期費用や月額費用はサービスにより様々ですが、楽天などのモール型ECでは数万~数十万円程度必要となります。Amazonなどのマーケットプレイス型では契約内容次第では初期費用や月額費用は数千円~と安価に済むケースがありますが、いずれも売上や利用サービスに応じて手数料が発生します。

自社のフェーズや取り扱う商品によってはモール型ECサイトが適している場合もありますが、長期的な運営を考えた場合、顧客リストの獲得やファンの育成など、モール型ECサイトにはデメリットも多く存在します。ブランディングやマーケティング戦略、利益率の向上を目指すためには自社ECサイトの構築を視野に入れた方がよいでしょう。

ECサイト制作費用の内訳

ECサイトの制作費用は、多くの項目から成り立っています。それぞれの項目にはどのようなコストがかかるのか、具体的に知っておくことで、予算の配分や節約のポイントを把握しやすくなります。

ここでは、ECサイト制作における主要な費用の内訳を解説します。企画からデザイン、開発や運営に至るまでに発生する費用を理解することで、無駄のない予算設定や、適切な業者選びに役立ちます。

企画・設計費

ECサイト制作を開始する前段階である企画、設計フェーズは、サイトの方向性や目的、機能要件などを明確にするための重要な工程です。このフェーズでの適切な企画や設計は、後の工程をスムーズに進行し、最終的な仕上がりを左右します。

企画、設計費は、一般的に総費用の10%〜20%を占めるとされています。質の高い企画、設計を求める場合や、独自の要件が多い場合は、企画・設計費用が高くなることが考えられます。

ディレクション費

ディレクション費は、ECサイト制作全体の進行管理や各種調整、品質管理などの役割を担当するディレクターの費用を指します。

ディレクターは、プロジェクトの目標達成の方針を決めたり、関連するメンバー間のコミュニケーションをスムーズに進めたりする役目があります。適切なディレクションによって、制作過程が効率的に進行し、クオリティの高いECサイトが完成します。

ディレクション費は、総費用の10%〜15%を占めるとされ、プロジェクトの規模やディレクターの経験値、要求される品質によって、この費用は変動することがあります。

デザイン費

デザインは、ECサイトのユーザビリティや、ブランドイメージを形成する上で極めて重要な要素です。見た目の美しさだけでなく、ユーザーが直感的に操作できるインターフェースの設計もデザインに含まれます。デザイン費は、制作するページ数やデザインの複雑さ、必要なグラフィックの量などによって大きく変動します。

デザイン費は、総費用の15%〜25%ほどと考えられ、イラストやアニメーションを多用する場合、またはブランドイメージを高度に反映したオリジナルデザインを求める場合には、この費用はさらに上昇する可能性があります。

コーディング費

デザインが完成した後のステップとして、実際にウェブページの形に変換する作業がコーディングです。コーディングは、デザインの精度を保ちつつ、サイトがスムーズに動作するようにHTML/CSS/JavaScriptなどの言語を使用して行われます。この工程は、サイトの動作や表示速度、更にはSEOへの影響など、多くの要素に関わるため、専門的な技術が求められます。

コーディング費は、ページ規模や開発要件、レスポンシブ対応などの要因によって変わり、総費用の20%〜30%を占めることが多いです。WordPressやshopifyなどのテンプレート開発に関わる費用も基本的にはコーディング費として計上されます。

カスタマイズ費(開発費)

多くのECサイトには、標準的な機能に加えて独自の機能やサービスを導入することが求められます。要件に応じてカスタマイズする際の費用が、カスタマイズ費、または開発費として計上されます。ECサイトの機能を拡張するために導入するプラグインやアプリもカスタマイズ費に含まれます。

開発費は、求められるカスタマイズの内容や複雑さによって大きく変わり、前項のコーディング費と合算して総費用の25%〜40%を占めることが一般的です。

有料プラグインやアプリを導入する場合はカスタマイズ費に加えて、月額プラン料金の支払いが別途必要になるケースがあります。買い切りのライセンス料として支払うものから、月額や年額での利用料が発生するものまで様々です。これらの料金も事前にチェックしておきましょう。

ささげ業務代行費(原稿作成・撮影)

ECサイトでは商品情報や企業情報を伝えるための原稿や画像が不可欠です。しかし、専門的な知識や技術を要する原稿作成や商品撮影は、多くの企業にとって難易度が高い業務となります。そのため、専門のライターやカメラマンにこれらの業務を代行してもらうことが一般的です。

ささげ業務代行費は、作成する原稿の量や撮影する商品数、その内容や品質要求によって変動します。総費用の5%〜10%を占めることが多く、高品質な文章やプロフェッショナルな撮影を求める場合、この範囲を超えることもあります。

外部サービス利用料

多くのECサイト制作では、外部のサービスやプラットフォームを利用することが一般的です。例えば、決済サービスや在庫管理ツール、顧客管理システムなどのサービスを導入する際に、それらのサービス利用料が発生します。この費用は、月額や年額、取引量に応じて変動することが一般的です。

サービス利用料の具体的な相場はサービスの種類やプランによって異なるため、必要なサービスを明確にし、それぞれの料金を事前にチェックしておきましょう。

サーバー費

ECサイトを公開して運営するためには、サーバー環境が必要になります。サーバー費は、サイトの規模やアクセス数、必要なスペックによって変動しますが、一般的に、共有ホスティングの場合は月額1,000円から1万円、専用サーバーやクラウドサーバーの場合は月額数万円からハイスペックなものだと数十万円以上となります。

また、大規模なECサイトや高いセキュリティ要件が求められる場合、さらに高額なサーバー費が必要になることもあります。サーバー費には、サーバーのレンタル費用の他、メンテナンスやセキュリティの対策費用なども含まれるため、継続的なコストとして計画的に予算を確保することが重要です。

なお、shopifyなどのASP型ECサイトではサーバー費が利用料に含まれるケースもあります。

ドメイン費

ドメインは、ECサイトのアドレスとしての役割を果たし、ブランドの信頼性や覚えやすさにも寄与します。ドメインの取得には、年間の更新料が必要となり、この費用をドメイン費として計上します。

一般的な「.com」や「.jp」などのドメインは、年間1,000円から5,000円程度です。ドメインの選択は、サイトの目的やターゲット、ブランディング戦略などを考慮して行うことが推奨されます。

SEO対策費

SEO(検索エンジン最適化)は、ECサイトが検索エンジンで表示順位を上げるための対策です。検索結果が上位になることで、サイトへの流入が増加し、売上向上に繋がります。SEO対策には、サイト構造の最適化、コンテンツの質の向上、外部からのリンクの取得など、多岐にわたる作業が含まれます。

費用は、制作会社が兼務する場合とSEO専門業者が対応するケースで金額は大きく変わります。実施する内容にもよりますが、月額5万円から50万円程度の予算で数か月~1年程度の契約で実施するケースが多いでしょう。SEO専門業者の場合は成果報酬制でサービス提供しているケースもあり、料金形態は様々です。

競合が激しい業界やキーワードで上位表示を目指す場合、この範囲を超えることもあります。また、SEO対策は継続的に行う必要があるため、長期的な視点での予算配分が求められます。

各種タグ設置費(アクセス解析・広告用)

ECサイト運営において、ユーザーの行動や、サイトパフォーマンスを把握するためのアクセス解析は不可欠です。また、広告活動を効果的に行うためには、広告用のタグ設置が必要となります。これらのタグをサイトに設置する作業がタグ設置となります。
各種タグ設置費は、設置するタグの種類や数、サイトのページ数や構造によって変動します。

一般的には、相場は5万円から15万円程度と考えられます。特定の高度な解析や広告戦略を採用する場合、タグの設置が複雑化し、この範囲を超えることも考えられます。タグ設置は、サイトの運営や広告活動の効果を最大化するための基盤となるため、専門的な知識を持った業者に依頼することが推奨されます。

ECサイト制作費用を安く抑えるポイント

ECサイト制作の費用を効果的に抑えるためには、初期段階から要件を明確にしていき、途中での変更を避けることが重要です。

この章では、最低限押さえておきたい8つのポイントを解説します。これらのアプローチを組み合わせることで、品質を維持しながら制作費用を最適化することができます。

要件をまとめたRFP(提案依頼書)を用意する

ECサイト制作の際に、具体的な要件や期待する成果を明確に示すRFP(提案依頼書)を用意することは、効果的なコミュニケーションの手段として有効です。

RFPには、サイトの目的や機能、デザインの方向性、期限などの詳細を全て記載します。これにより、制作依頼する際の認識のズレを防ぐことができ、余分なコストや時間のロスを防ぐことができます。

また、RFPをもとに複数の業者から見積もりを取得することで、コストパフォーマンスの良い業者を選ぶこともできます。

複数の制作会社に相見積もりを依頼する

制作費用を適切に抑えるための一つの方法として、複数の制作会社に相見積もりを依頼することが挙げられます。

同じ要件に基づく見積もりを複数の業者から取得することで、各業者の価格設定や提供するサービスの内容を比較、検討しやすくなります。このプロセスを通じて、最もコストパフォーマンスの高い業者を選定することが可能となるだけでなく、交渉材料としても役立ちます。
ただし、最も安価な業者を選ぶことが最良とは限らず、品質やサポート、実績なども総合的に評価することが大切です。

制作スケジュールや納期に余裕を持たせて依頼する

制作スケジュールや納期が短縮されると、その分、業者がリソースを集中的に投入しなければならないため、コストアップの要因となることが考えられます。

一方で、余裕を持ったスケジュールを提示することで、業者も効率的に作業を行えるため、緊急対応やオーバータイムに起因する追加費用を防ぐことができます。また、余裕を持ったスケジュールの場合、中間チェックやフィードバックの時間も十分に取ることができるため、品質向上や誤解を防ぐ効果もあります。

自社で原稿や素材を用意する

原稿や画像、動画などのコンテンツは、制作費用の大部分を占めることがあります。外部のライターやカメラマンに依頼する場合、その費用は高額になりがちです。

しかし、自社でこれらの素材を用意することで、そのコストを大幅に削減することができます。特に、商品の説明文や企業の紹介文など、自社の特色や魅力を伝える内容は、内部スタッフが書いた方が正確かつ魅力的になることも多いです。ただし、品質を確保するために、専門的な知識や技術が求められる場合は、外部の専門家に依頼することも検討する価値があります。

自社で商品登録を行う

商品登録は、ECサイトにおいて欠かせない業務の一つであり、手間がかかります。
特に、商品数が多い場合や、定期的に商品ラインナップが変わる場合、商品登録に関する作業量は増大します。制作会社や外部の業者に商品登録を依頼すると、その分の追加コストが発生します。

しかし、自社でこの作業を行うことで、大幅にコスト削減ができます。また、商品に関する知識や情報が豊富な内部のスタッフが登録作業を担当することで、より詳細な情報をサイトに掲載することが可能となります。

テンプレートを利用して制作する

カスタムデザインのECサイト制作は、オリジナリティやブランドイメージの強化には効果的ですが、コストがかさんでしまうことも事実です。

その一方で、テンプレートを利用したサイト制作なら、初期投資を大幅に削減できるというメリットがあります。多くのCMSやECサイト構築プラットフォームでは、プロフェッショナルなデザインのテンプレートが豊富に用意されており、これらを利用してのカスタマイズにより、短期間かつ低コストでのサイト立ち上げが可能です。

ただ、テンプレートを選ぶ際には、ビジネスの目的やブランドイメージに最適なものを選定する眼識が求められます。

必須ではない機能要件を除外する

ECサイト制作の初期段階での要件定義は、後のコストや工数に大きな影響を与えます。理想的な機能を全て盛り込むと、制作費用や開発期間が増大するリスクがあります。

そのため、最初は必要な基本的な機能のみをピックアップし、余分な機能は後回しにするか、あるいは段階的に追加するアプローチが賢明です。

この方法で、初期投資のコストを抑えつつ、サイト運営を開始できます。その後、ユーザーの反応やニーズに応じて、追加機能を実装することで、効果的なサイト運営を実現することができます。

補助金を活用する

国や地方自治体、業界団体などから、中小企業や起業家向けに提供される補助金や助成金を活用することで、ECサイトの制作費用を大幅に削減することが可能です。特に、地域の商業振興や雇用創出、技術革新を目的とした補助金制度では、ECサイトの構築やリニューアルに関連する費用の一部が支援対象となる場合が多いです。

具体的な補助金の内容や支援額は、提供元や制度によって異なるため、自社のビジネスモデルや計画に合致する補助金をリサーチし、適切な申請を行うことが重要です。また、申請の際には、事業計画の明確化や必要書類の整備が求められるため、十分な下準備と計画が必要となります。

まとめ

今回は、ECサイト構築費用の相場から費用内訳、安く抑えるポイントについて解説しました。

制作費用の相場はECサイト構築方法や要件によっても大きく異なるため、一概にいくらと言い切ることはできません。またクオリティを求めるか、コストを重視するかによっても適正金額は異なってきます。

ECサイトの立ち上げを検討されている方は、まずは自社にとって必要な要件を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか?

今回ご紹介した内容がECサイト構築を検討する際の参考になれば幸いです。

弊社では補助金を活用したECサイト構築支援やWordPressやshopifyに関するご相談、サイト診断や運用サポートに関する内容など、幅広い業種・業態のWeb制作・ホームページに関する無料相談を承っています。オンライン相談も実施していますので、お気軽にご相談ください。
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